スカイポーツのアジア太平洋地区責任者に就任したYun-yuan Tay氏に、シンガポールでの次世代空モビリティ(以下AAM:Advanced Air Mobility)、アジアにおけるスカイポーツの今後の展開、そしてアジアでのAAMの課題などについて聞きました。
Q:他の地域と比較してアジアはAAMの社会実装においてどのようなポジションにいると思いますか?
アジアは、シンガポールを筆頭にAAMの社会実装の最前線にいると考えています。 2019年、スカイポーツとボロコプターは、シンガポールで初の旅客エアタクシー用バーティポート(離着陸場)のプロトタイプ「ボロポート」を展示し、ボロコプターはマリーナベイ地区で国内初の有人飛行を完了させ、2024年の初期商用運航開始を目指しています。 また、他の多くのアジア諸国もAAMの実装に熱意を示しています。 例えば、日本は2018年に「空の移動革命に向けたロードマップ」を発表し、 2022-25年にかけてを試験飛行から商業運航開始の時期としていますし、韓国のロードマップでは2025年までに最初の商業運航を実現する方針を示しています。
Q:スカイポーツ社は、なぜシンガポールを、アジアで最初にバーティポートネットワークを構築するターゲット市場として選んだのでしょうか?
AAMの市場ポテンシャルを評価する際のレンズとしては、主要な機体メーカー、運航事業者、離着陸インフラ事業者の存在、好ましい規制環境、があげられます。 私たちがシンガポールを選んだのは、これらの重要な要素が揃っているためです。
シンガポール政府は、スマートでコネクテッドな国家の構築に非常に積極的で、さまざまな政府機関や、ドイツのエアタクシーのパイオニアであるボロコプターとの間で、AAMに関する協調的なアプローチが行われています。 シンガポールは、今後もこの地域のAAM導入の発展をリードし、私たちがアジアの他の地域やグローバルに事業を展開するためのゲートウェイになると考えています。
Q:アジアでAAMを導入する上で、どのような課題があると思いますか?
AAMが普及するためには、機体開発、社会受容、離着陸場インフラ整備という3つの大きなハードルがあります。
機体開発には多大な努力と時間、資本が投入されており、やがて最初の認証が承認されることは間違いないでしょう。 社会受容に関しては、業界全体として新技術に対する一般の人々の不安感に敏感である必要があると思います。私たちは規制当局と緊密に連携して、旅客の安全と安心を保証します。 一方で離着陸場インフラは、機体ほど注目されていないとは思います。 ですが、人やモノを運ぶには、安全、安心、効率的な離着陸場が不可欠であり、それがなければ、エアタクシーは文字通り離陸することができません。
インフラ整備には、戦略的な立地における用地確保、電力網の容量や乗客のアクセスなど機体運行に必要なサービスの確立、当局と共同での規制要件の設定など多くの課題があります。 そのため、私たちは、2020年代半ばの商用運航開始を目標に、離着陸インフラ整備に注力しています。
Q:アジアにおけるスカイポーツの次の目標は?
2019年にシンガポールで世界初の旅客用バーティポートを建設して以来、世界の重要な市場でバーティポートネットワークの開発に取り組んでいます。 シンガポールでのショーケースは、バーティポートの技術的な運用をテストし、規制当局と関わり、人々の意識を高めることができたので、私たちにとって非常に重要でした。 現在、私たちは次のバージョンのバーティポートの建設とテストを行っており、2024年までにプロセスを完了させ、最初の商用運航を開始する予定です。
Q:COVID-19によって、スカイポーツはどのような影響を受けるのでしょうか? どのように対応しているのでしょうか?
私たちは、このパンデミックによって、ドローン配送においても、無人・安全かつ少人数の空の移動においても、AAMの重要性がこれまで以上に高まったと考えております。 例えば、当社のドローン配送チームは、英国の国民保健サービス(NHS)と直接連携し、スコットランドの医療施設間で医療品を移動させることで、COVID-19パンデミックへの対応を支援しています。 私たちのドローン配送サービスでは、車とフェリーで合計6時間かかるところを15分に短縮することができるため、病院にとってより効率的な物流サービスを提供しており、その結果、患者さんにとってより医療の水準を高めることができています。
Q:最後に、あなた自身について、そしてアジアでスカイポーツの事業をどのように成長させていくのか、教えてください。
航空会社や空港、さまざまな航空会社の長期的な戦略立案や業務改善を10年近く支援してきた経験から、今、アジアでスカイポーツのビジネスをリードし、成長させることができることに興奮しています。 この業界は新しいものであり、誰もすべての答えを持っていません。 常に新たなビジネスパートナーやチームに加わっていただける方を募集しております。 是非私たちに声をかけてください。